「来場者数、主催者発表で3万人」。イベントの報告書やニュースでおなじみのこの数字が、どう作られているかご存じでしょうか。
よくあるのは、ピーク時の目視の見立てに時間と係数を掛ける方法、配布物の数から逆算する方法、過去の「実績」を踏襲する方法。どれも悪意ではありません。ただ、数え方の定義も記録も無いまま、翌年「昨年比105%」という比較だけが独り歩きします。
来場者数は、実はイベント評価に向いていない
さらに根本的な問題があります。仮に来場者数が正確に数えられたとして、その数字は「イベントが良かったか」にあまり答えません。
- 天気が良ければ増え、悪ければ減る(企画の質と無関係に)
- 同じ3万人でも「通り抜けた3万人」と「滞在して楽しんだ3万人」は別物
- 会場の数字だけでは、周辺の商店街に効果がこぼれたのか分からない
来場者数は規模の指標であって、質と効果の指標ではないのです。
測るなら、この3つ
1. 会場の滞在の分布。何分いた人がどれだけいたか。「通過型」か「滞在型」かは、次の企画(コンテンツの配置・休憩場所)に直接効きます。
2. 周辺への波及。会場だけでなく、最寄り駅からの経路や隣接する商店街の通行が、開催日と平常日でどう違ったか。「まちに効いたか」はここに出ます。
3. 時間帯の形。ピークがいつで、どれだけ鋭いか。運営(警備・トイレ・ごみ)の計画は合計値ではなくピークで決まります。
「何人来たか」より「どう過ごし、まちにどう波及したか」。来場者数を1つ数える予算で、来年の企画を変える3つの数字が測れます。
それでも来場者数を出すなら
広報上、来場者数が必要な場面はあります。その場合は最低限、数え方を固定して記録してください。
- 定義: どこを(会場の入口すべてか、代表点か)・何を(入場者か、通行者か)・いつからいつまで
- 方法: 計測か、推計か。推計なら式と係数を書き残す
- そして翌年も同じ定義で数える(定義が変わった年は、前年比を出さない勇気を)
これだけで、「主催者発表」は数年後に比較可能な時系列に変わります。
おわりに
イベントの数字は、祝祭の勢いで甘くなりがちです。しかしイベントこそ、税金と地域の労力が集中的に投じられる場面。「盛り上がった気がする」を「どこで・誰が・どれだけ滞在し、まちにどう波及したか」で語れたら、イベントは単発の打ち上げ花火から、まちづくりの実験装置に変わります。