私たちはカメラ映像による計測を提供する会社です。その上で正直に書きます——通行量・滞在の計測手法はカメラだけではなく、カメラが最適でない場面もはっきりあります。
主な手法と、得手不得手
| 手法 | 得意 | 不得意 |
|---|---|---|
| カメラ映像(AI解析) | 断面の通過量・方向・滞在・車種などの詳細。検証可能性(記録が残り監査できる) | 広域の面的な把握。設置場所ごとの調整とプライバシー設計が必須 |
| レーザー/赤外線カウンタ | 単純な通過数を長期・安定・安価に。プライバシー懸念が小さい | 方向・属性・滞在は苦手。並走や集団を1人と数えがち |
| Wi-Fi/Bluetoothセンサ | 広めのエリアの滞在傾向・回遊の把握 | 端末の設定変化(OSのランダム化)で捕捉率が変動し、絶対数に弱い |
| 携帯電話網の統計データ | 市域・圏域スケールの面的な傾向、来訪圏の分析 | 特定の交差点・広場のような狭い断面。メッシュより細かい粒度 |
どう組み合わせるか
実務でうまくいくのは、単独採用ではなく役割分担です。典型的な組み合わせを2つ挙げます。
面はキャリア統計、点はカメラ。市全体の傾向や来訪圏は携帯電話網の統計データで面的に把握し、施策対象の広場・交差点など「意思決定する断面」だけカメラで詳細に測る。全部をカメラでやるのは過剰で、全部を統計データでやるのは粗すぎます。
常時はカウンタ、検証はカメラ。長期の傾向監視は安価なカウンタで回し、カウンタの癖(集団の数え漏らし等)を年に数回のカメラ計測で校正する。互いの弱点を補い合う形です。
「どの手法が一番良いか」ではなく「どの問いを・どの粒度で・いくらで」。手法から入る調達は失敗しやすく、問いから入る調達は自然に組み合わせに辿り着きます。
カメラを選ぶべきでない場面
私たちの商売に反しますが、明記しておきます。
- 単純な通過数だけを、1箇所で、長期に知りたい → カウンタの方が安くて堅い
- 市全体の面的な傾向だけが要る → 統計データで十分。カメラの出番はない
- プライバシーの説明コストを最小にしたい単純計測 → 映像を使わないセンサに分がある
逆に、方向・滞在・車種・行動の中身が要る場面、そして数字の根拠を後から監査できる必要がある場面では、カメラ計測が最も強い選択肢になります。
発注時のチェックリスト
- 答えたい問いに対して、手法の粒度が合っているか(面の問いに点の手法、点の問いに面の手法を当てていないか)
- 提案された手法の「不得意」を、提案者自身が説明できるか
- 複数手法の組み合わせ・校正の設計が検討されているか
おわりに
手法の優劣は文脈で決まります。私たちがこの比較を正直に書くのは、問いに合わない手法で失敗した計測は、手法全体への不信になって返ってくるからです。カメラが合う場面で選ばれ、合わない場面で正直にそう言う——長く続く関係は、そこからしか生まれません。