このブログでは、通行量・滞在の計測を発注する側の確認点を、テーマごとに書いてきました。この記事はその総集編です。仕様書・検収要件にそのまま転記できる形で、10項目にまとめます。各項目の背景は、それぞれの詳細記事にあります。
計測の設計に関する項目
1. 計測断面・区画の位置図と根拠
計測線・区画の正確な位置と、何を基準に引いたかを成果物に含めること。誤差の主因は、アルゴリズムより先に線の位置です。詳細: 「数字を狂わせたのはAIではなく『線の引き方』だった」
2. 指標の定義の固定
「停車時間」「滞在」などの指標は、定義(判定の基準点・時間区分・閾値)を仕様で固定すること。同じ言葉から複数の数字が出ます。詳細: 「『停車時間』には3つの定義がある」
3. 観測時間の設計
答えたい問いを「単発で可/連続観測が必要/繰り返しが必要」に分類し、時間ものの指標は判定基準から逆算した観測時間を要件にすること。詳細: 「一度の調査では答えられない問い」
結果の表現に関する項目
4. 「0」と「判定不能」の区別
観測してゼロだったことと、原理的に測れないことを、報告書上で区別して表現すること。詳細: 「『0台』と『判定不能』は違います」
5. 補正の内容と量の報告
誤検出の型ごとの補正内容と補正量を報告すること。合計だけでは補正の大きさが見えません。詳細: 「AIは何を見間違えるか」
6. 前処理の一覧と効果検証
解析前に映像へかける処理の一覧と、その効果検証(正解付きデータでのbefore/after)を求めること。詳細: 「『映像をきれいにしてから数える』は逆効果だった」
検証に関する項目
7. 精度検証の方法の開示
「精度◯%」の算出方法(何と突合したか・内訳まで見たか)と、検証済み/未検証の地点の区別を求めること。詳細: 「AIと人力カウントが一致した。だから疑った」
あわせて、突合に使う人力カウント側の記録(いつ・誰が・どの範囲を数えたか)も要件にしてください。詳細: 「『答え合わせ』の正解にも品質がある」
8. メートル換算の根拠
ピクセル→メートル換算の出典・検算・暫定/確定の区別が記録されること。可能なら図面を初期に提供すること。詳細: 「その1ピクセルは何メートルか」
データの扱いに関する項目
9. プライバシー設計
顔検出・顔識別の不使用、映像の保持ポリシー、告知と窓口の計画を仕様で確認すること。詳細: 「駅のカメラはなぜ批判されたのか」
10. 再現一式の納品
集計表だけでなく、定義書・再集計可能なデータ・検証記録を納品物とし、次回調査や別事業者でも再現できる状態を要件にすること。詳細: 「交通量調査を使い捨てにしない」
実証実験の場合は、本運用への引き継ぎ設計も契約段階で。詳細: 「実証が終わった後の話」
10項目に共通するのは一つの原則です——数字そのものではなく、数字の出所が残ることを要求する。これだけで、調査は使い捨ての報告書から、蓄積される観測に変わります。
使い方
すべてを一度に要求する必要はありません。小さな単発調査なら1・2・4だけでも品質は大きく変わります。大きな調査や実証では10項目をチェックリストとして仕様書に添付し、提案側に「対応可否と方法」を書かせるのが実務的です。対応できない項目に正直な理由を書いてくる事業者は、信頼できます。
おわりに
この10項目は、私たち自身が失敗しながら固めてきた規律の一覧でもあります。発注側の要求水準が上がることは、誠実にやっている事業者にとっては追い風です。どうぞ遠慮なく、仕様書に書いてください。