AI計測の導入を検討する庁内の議論で、口には出されにくいものの必ず存在する不安があります。「これを入れたら、私たちの仕事はなくなるのか」。正面から答えます。
機械化されるのは「数える」であって「決める」ではない
私たちのシステムの役割分担は、最初から固定されています。
- ルールは、機械が適用する(数える・補正する・秘匿する・判定不能を判定する——すべて決められた基準の機械的な適用)
- 判断の材料は、機械が並べる(数字と一緒に、出典・定義・補正量・信頼度を提示する)
- 確定は、人が行う(この数字を施策の根拠として採用するか。どの施策を選ぶか。住民に何をどう説明するか)
システムは答えを言いません。答えの根拠になれる状態を保つだけです。これは技術的な限界ではなく、設計思想です。都市の意思決定の責任は、機械に移せないし、移すべきでもないからです。
なくなる仕事と、濃くなる仕事
正直に言えば、なくなる作業はあります。ビデオを目視で数える、集計表を手で転記する、調査のたびに定義を思い出す——こうした作業は消えます。
その分、濃くなる仕事があります。
問いを立てる仕事。何を測るべきかは、機械には決められません。現場と住民を知る職員にしか、良い問いは立てられない。
定義を決める仕事。「停車時間」の定義、判定不能の扱い、公開の粒度——このブログで書いてきた論点はすべて、機械ではなく人の決定事項です。
確定に責任を持つ仕事。数字を根拠として採用する判断、説明する言葉を選ぶ判断。ここが行政の仕事の核心であることは、何も変わりません。
計測の自動化は、職員を「数える人」から「問いを立て、定義を決め、確定に責任を持つ人」に変えます。仕事の総量ではなく、仕事の重心が変わるのです。
スキルの話を具体的に
「データ人材が必要」とよく言われますが、統計やプログラミングの研修から始める必要はありません。このブログで繰り返してきた問いを口にできれば、それがデータ人材の第一歩です。
- 「その数字の定義はどこに書いてありますか」
- 「0と判定不能は区別されていますか」
- 「検証は何と突き合わせましたか。内訳は見ましたか」
- 「来年、同じ定義で測り直せますか」
これらはすべて、技術ではなく態度の質問です。そして態度は、現場を知る職員のほうが技術者より速く身につけられます。
おわりに
AIは職員の代わりに数えます。しかし、何を数えるべきかを知っているのは、その街で働いてきた人です。私たちのシステムが「確定は人」を最後の一線にしているのは、譲歩ではなく、そこにしか置けないものがあるからです。