白状すると、私たちのダッシュボードにも、実データと合成データ(ダミー)が同じ顔で並んでいた時期があります。
開発初期の画面には、実在のバス時刻表や道路の形状(実データ)と並んで、乱数から作った通行量や、全停留所に同じ値を入れた「それらしい指標」が表示されていました。画面としては立派に見えます。しかし、見る人にはどれが本物か区別できません。
「それらしい数字」は、いつか必ず露呈する
ある日、全30停留所の待ち時間がまったく同じ値で並んでいるのを、スクロールしながら眺めて気づきました。合成データが実データと同じ書式で並んでいると、丁寧に見る人ほど不信感を持ちます。そして一度「この画面のどれが本物か分からない」と思われたら、実データの信頼まで巻き添えになります。
そこで私たちは方針を固定しました。計測していないものは、それらしく埋めずに「計測していません」と表示する。合成の指標は削除し、実データには出所を、未計測には「この問いに答えるには何が必要か」を書く。画面の見栄えは下がりましたが、どの数字も出所を説明できる状態になりました。
デモ画面の空白は恥ずかしくない。出所を説明できない数字が並んでいることのほうが、ずっと恥ずかしい。
デモを見せられたら、これを聞いてください
自治体の担当者は、事業者のダッシュボードのデモを見る機会が多いはずです。そのとき、次の質問がそのまま品質の試金石になります。
- 「この画面のうち、実データはどれですか。合成・想定値はどれですか」
- 「この数字の出所(いつ・どこで・どう計測したか)を、画面から辿れますか」
- 「計測していない項目は、画面上でどう表示されますか」
よくできた事業者なら、この質問を歓迎します。答えに詰まるようなら、導入後に納品されるのも「それらしい数字」かもしれません。
なぜ空白を残す設計にしたか
合成データを全部消せばよい、という話ではありません。設計検討のシミュレーションなど、合成データにも正当な用途があります。問題は実測と同じ書式・同じ顔で並べること。私たちは「実測」「暫定(未検証)」「判定不能」「未計測」を画面上で区別し、それぞれ違う見た目で出すようにしています。数字の確からしさに段階があるなら、見た目にも段階があるべきだからです。
おわりに
ダッシュボードは、都市を良くする道具にも、分かった気にさせるだけの道具にもなります。分かれ目は機能の多さではなく、画面のすべての数字に「これはどこから来たか」を答えられるかどうか。私たちは後者を選び続けるつもりです。