データ整備の価値がいちばん試される場面はどこか。私たちは「議会」だと考えています。
「その数字の根拠は何か」「前回の調査と数字が違うのはなぜか」「なぜ測っていないのか」——議会質問は、データの弱点を正確に突いてきます。そして答弁の破綻は、施策そのものへの不信に直結します。
議会質問の型は、実は3つしかない
型1: 根拠を問う。「その数字はいつ・どこで・どう測ったものか」。出典と定義が数字に紐づいて管理されていれば、即答できます。紐づいていなければ、答弁は「確認します」になり、次の質問を招きます。
型2: 差分を問う。「前回と違うのはなぜか」「隣接市より少ないのはなぜか」。比較の条件(期間・場所・定義)が記録されていれば、「定義が異なるため単純比較できない」と正面から答えられます。これは逃げではなく、最も誠実な答弁です。
型3: 不在を問う。「なぜ測っていないのか」。ここで効くのが、このブログで繰り返してきた「判定不能」と「観測待ちの問い」の整理です。「測っていない」ではなく「この理由で現時点では測れない。測るには◯◯が必要」と答えられれば、質問は攻撃から予算要求の追い風に変わります。
答弁に強いデータとは、正確なデータではなく、出典・定義・限界が数字に紐づいて管理されているデータです。精度より整理が、答弁を守ります。
答弁から逆算するデータ整備
「データ整備」を漠然と進めるより、想定答弁から逆算すると優先順位が明確になります。
- 主要な公表数字それぞれに、出典・定義・計測条件のメモが1枚ついているか
- 経年で比較できる数字と、定義が変わって比較できない数字が区別されているか
- 「測っていないもの」の一覧と、その理由(予算・技術・優先度)が整理されているか
これらは、まさに監査可能な計測(出典が残る・定義が固定される・判定不能が区別される)がそのまま提供するものです。答弁準備という観点は、データ整備の要件定義として意外なほど優秀です。
「不都合な数字」への備え
データを整備すると、施策に不都合な数字も見えるようになります。これを恐れて整備をためらう空気があるなら、逆だと申し上げたい。不都合な数字を自分たちが先に把握していることこそ、最強の答弁準備です。指摘されてから知るのと、把握した上で対応を検討中であるのとでは、議会での立ち位置がまったく違います。
おわりに
議会は、データ整備の投資対効果が最も分かりやすく現れる場所です。「答弁に耐えるか」という問いを仕様書の段階で立てておく——それだけで、調査の要件は自然と「出典が残る・定義が固定される・限界が明示される」ものになります。