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グラフは嘘をつける — 誠実なデータ可視化の約束事

軸の切り方、期間の切り取り、平均だけの比較、欠測の無断補間——数字を偽らずに印象を操作する方法は山ほどあります。私たちが可視化に課している規律と、資料を受け取る側の4つのチェックポイント。

山本 新山本 新

同じデータから、正反対の印象を作れます。道具は、グラフです。

軸を50%から始めた棒グラフは、小さな差を劇的に見せます。都合の良い2時点だけを結んだ折れ線は、下降トレンドを上昇に見せます。数字そのものは一切偽っていない——それでも読み手の判断は操作される。データ活用が進むほど、この問題は行政資料の中で大きくなります。

よくある「正直な嘘」の型

  • ゼロから始まらない軸: 差を誇張する定番。棒グラフでは特に効果が強い
  • 期間の切り取り: 都合の良い起点を選べば、たいていのトレンドは作れる
  • 平均だけの比較: 分布の形(ばらつき・偏り)を隠す。滞在時間のような偏った指標で特に危険
  • 移動平均だけの表示: 急な変動(イベント・異常)を消してしまう
  • 2軸グラフ: 軸の取り方次第で、無関係な2系列に相関があるように見せられる
  • 欠測の無断補間: 測っていない期間を線でつないで、測ったように見せる

言葉より実物のほうが早いので、代表的な3つを架空データで再現しました。左右は同じデータです。

縦軸を1180から始めた棒グラフとゼロから始めた棒グラフの比較。同じ+3.3%の差が、左では数倍の差のように見える
図1: 縦軸の起点だけで、+3.3%が「劇的な増加」に化ける(架空データ)
直近4ヶ月だけを切り取った上昇グラフと、全24ヶ月の下降トレンドを示す同一データのグラフの比較
図2: 期間の切り取り。左だけ見せられたら「回復」と報告される(架空データ)
平均値だけの棒グラフでは同一に見える2つの広場が、滞在時間の分布では全く違う使われ方をしている比較図
図3: 平均は同じ8分でも、分布を見ると別の広場(架空データ)

私たちが可視化で自分に課しているルール

計測の誠実さは、最後の表示の一歩で台無しにできます。だから私たちは、可視化にも計測と同じ規律を適用しています。

  • 測っていない期間・判定不能の区間は、補間せず空白やラベルで見せる
  • 確からしさが違う数字(検証済み/暫定/速報)は、同じ見た目にしない
  • 平均を出すときは分布も出す
  • 比較のグラフは、比較の条件(期間・曜日・天候)を図の中に書く

グラフの誠実さの試金石はひとつ——「このグラフから受ける印象は、データを全部見た人が受ける印象と同じか」。違うなら、それは装飾ではなく操作です。

資料を受け取る側のチェック

  1. 縦軸はゼロから始まっているか。始まっていないなら、その理由に合理性はあるか
  2. 期間の起点はなぜそこか。別の起点でも同じ結論になるか
  3. 平均の裏の分布・件数が示されているか
  4. 欠測・未計測の期間が、グラフ上で分かるか

おわりに

グラフは数字より速く伝わり、数字より疑われません。だからこそ、作る側の規律が要ります。議会資料でも住民説明でも、「印象操作のないグラフ」は最終的にいちばん強い説得材料になります——疑われたときに、何も崩れないからです。

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