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大きな実験の前に、試し撮りを1本 — 実証の段階設計

長時間の連続計測をやる前に、私たちは必ず固定カメラの試し撮り1本を挟みます。その1本で映像の安定性・対象の見え方・距離の基準という3つの前提を同時に検証できるからです。「実証したが何も残らなかった」を避けるための段階設計とチェックリスト。

山本 新山本 新

「まず半日以上の連続計測をやってみましょう」——実証の計画で、いきなり大きな実験から入りたくなることがあります。私たちはその前に、必ず固定カメラの試し撮りを1本挟むことにしています。

大きな実験がいちばん高くつくのは、失敗したときではない

長時間の連続計測には、機材・電源・設置許可・立ち会いと、それなりの段取りが要ります。これが「撮れたけれど使えなかった」で終わると、失った時間は撮影時間ではなく、次の機会までの数ヶ月です。実証の予算より、市の年度スケジュールのほうがずっと硬いからです。

そして「使えない」原因の大半は、事前に小さく検証できるものです。

試し撮り1本で、3つの前提を同時に検証する

私たちの場合、本番と同じ位置・同じ画角で撮る数分の試し撮り1本から、次を確認します。

  1. 映像の安定性——固定して撮れば揺れ補正が不要になるか、それでも残る揺れはどの程度か
  2. 計測対象の見え方——数えたい対象(歩行者・車種)がその画角で判別できるか。柱や屋根の陰で隠れる範囲はどこか
  3. 距離の基準——横断歩道の白線など、実寸が既知のものが画角に入っているか(映像内の距離をメートルに換算する基準になる)

この3つは、本番データの品質をほぼ決めます。逆に言えば、試し撮りで潰しておけば、本番は「長く回すだけ」に近づきます。

実証の設計は「大きな実験を計画する」ことではなく、「大きな実験の前に潰せる不確実性をすべて潰す」こと。

検証項目を先に列挙する、という習慣

試し撮りに限らず、私たちは実験の前に「この実験で何が検証されるのか」を列挙して、それぞれに合否の基準を書くようにしています。地味な習慣ですが、これがないと実験後に「で、何が分かったんだっけ」となり、分かった気になって終わります。

列挙してみると、大きな実験でしか検証できないことは案外少なく、多くは机上・既存データ・小さな撮影で先に潰せると分かります。残ったものだけが、本当に大きな実験の目的です。

実証を計画する側のチェックリスト

  1. この実証で検証したいことは何か、列挙されているか。それぞれの合否基準はあるか
  2. そのうち、小さな事前検証(試し撮り・机上検討)で潰せるものはどれか
  3. 本番の前に、本番と同条件の試し撮りが計画に入っているか
  4. 試し撮りの結果で計画を変更する余地(設置位置・画角・期間)が残っているか

おわりに

「実証したが、何も残らなかった」という経験談を自治体の方から聞くことがあります。原因の多くは実験の規模ではなく、順番です。小さく検証してから大きく回す——それだけで、同じ予算の実証から残るものが変わります。

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