正直な話から始めます。私たちは実証の初期、現地で数十本の動画を撮影しました。そのうち、そのまま解析に耐えたのはごく一部です。
原因は機材の性能でも、解析技術でもありませんでした。撮影の決まりを何も定めずに撮りに行ったこと。それがほぼすべてです。
何がだめだったのか
使えなかった動画の理由は、拍子抜けするほど単純でした。
- 手持ちで撮った——手ブレ自体より、撮影中に体ごと動いたり構図を直したりすることで、映像の座標が安定しない
- 途中でズームした——ズームすると映像内の距離の基準が変わり、前後の計測がつながらなくなる
- 短すぎた——数十秒の映像では、待ち時間や駐停車のような「時間もの」の指標が原理的に出せない
重要なのは、これらがすべて撮影前に決めておけば防げたことです。後からの補正技術も試しましたが、撮影時の問題を後処理で取り返すのは、うまくいかないか、高くつくかのどちらかでした。
撮り直しは1回の出張で済む。撮影ルールなしで撮った数十本の後始末は、その何倍もかかった。
固定した撮影の決まり
この失敗から、私たちは撮影プロトコルを固定しました。要点は3つだけです。
- 三脚などで固定する。手持ちにしない
- ズームしない。画角は撮影開始前に決めて、録画中は触らない
- 測りたい指標から逆算した長さを撮る(通過量なら数分〜、駐停車の判定なら基準時間の数倍)
加えて、撮影のたびに「いつ・どこから・何を狙って」を記録します。映像は撮った瞬間がいちばん情報が多く、記録がないと数週間後には自分でも条件を思い出せなくなります。
簡易調査を自分たちでやってみたい自治体へ
本格的な計測を発注する前に、まずスマートフォンで現場を撮ってみたい——という相談を受けることがあります。それ自体は良い第一歩です。そのときは上の3項目に加えて、次を確認してください。
- 撮影場所の私有地・管理者の許可と、撮影している旨の掲示
- 人の顔が大きく写る近距離・低い角度を避ける(俯瞰気味が計測にも配慮にも良い)
- 同じ場所・同じ画角で撮り続けられるか(比較する予定があるなら特に)
おわりに
この失敗は、いまでは私たちの撮影要件書の根拠になっています。失敗自体は避けられたものでしたが、「何が撮影をだめにするか」の一覧が実地で手に入ったとも言えます。これから実証を計画する方は、この一覧をどうぞ最初から使ってください。