通行量の計測を事業者に発注する前に、一度だけ自分たちで測ってみることをお勧めしています。目的は正確な数字を出すことではありません。一度でも自分で測ると、事業者の提案書と報告書の読み方が別物になるからです。
手順1: 問いを1つに絞る
「この横断歩道を、平日の夕方に何人が渡るか」。このくらい狭い問いにしてください。「駅前の通行の実態を把握する」のような広い問いは、初回には向きません。問いが1つに絞れると、撮る場所・向き・時間が全部決まります。
手順2: 撮影の決まりを守る
私たちが失敗から固めたルールは3つです。詳しくは撮影ルールの記事に書きましたが、要点だけ再掲します。
- 固定する(三脚・手すりへの固定など。手持ちは不可)
- ズームしない(画角は録画開始前に決めて、録画中は触らない)
- 測りたい指標に必要な長さを撮る(通過数なら10〜15分でも練習になる)
加えて、撮る前に必ず確認すべきことが2つあります。
- 場所の許可: 施設や管理地なら管理者の了解を取る。公道でも通行の妨げにならない位置に
- プライバシー配慮: 顔が大きく写る近距離・低角度を避け、やや高い位置から俯瞰気味に。撮影中は分かるように立ち会う。撮った映像は数え終わったら消す
手順3: 自分の目で数えて、記録を残す
撮った映像を再生して、正の字で数えます。このとき、後で効いてくる記録をあわせて残してください。
- どこを通ったら「通過」とするか、自分で決めた線(画面のどこか)
- 数えなかったもの(自転車は? ベビーカーは? 立ち止まって戻った人は?)
- 迷ったケースとその件数
数え終わる頃には、体感で分かります——「数える」より「何を数えるか決める」ほうが難しい、ということが。この体感が、発注者としての目になります。
一度測ると、提案書のここが読めるようになる
自分で15分ぶん数えただけで、事業者への質問が具体的になります。
- 「計測線はどこに引きますか。決めた根拠は残りますか」(自分も線の位置で迷ったはず)
- 「自転車やベビーカーはどう扱いますか」(自分も迷ったはず)
- 「立ち止まった人が線の上で揺れたら、二重に数えませんか」(映像を見ていれば必ず気づく現象)
これらは、私たちがこのブログで書いてきた確認項目そのものです。自分の15分の体験が、チェックリストを暗記ではなく実感にしてくれます。
おわりに
計測の発注で最大のリスクは、発注側が「測るとはどういうことか」の体感を持たないまま、報告書の数字を受け取ることです。スマートフォン1台と15分の映像が、その体感を作ります。安上がりな研修だと思って、ぜひ一度。